Tribulationes

わが心の悩みを(ラインベルガー)


 ファドゥーツ生まれのリヒテンシュタインの作曲家、オルガニストのヨーゼフ・ガブリエル・ラインベルガー(1839-1901)は、幼時より非常な才能をあらわし、7歳で早くも生地の教会オルガニストとなっている。1851年からミュンヘンの王立音楽学校に学び、その後も同地にとどまり、母校の教授をつとめている。ラインベルガーの世界的名声は、対位法の権威としてで、交響曲、室内楽、オペラ、合唱などの世俗曲もあるが、オルガン曲や教会音楽にとくに優れていた。教会音楽としては、14のミサ曲、3曲のレクイエム、2曲のスターバト・マーテル、多くの小典礼曲、宗教歌曲、合唱曲などがある。

 ラインベルガーの教会音楽にはおだやかさと晴やかさがみなぎっており、聴く者を圧倒することなしに、しかるべき時には記念碑的なものへと高められている。言葉の内容を個々の場合に明らかにあらわすということもあるが、それ以上に全体的な感動を表現し、古典派的ロマン派的な根底に立つ広がりのある形式を与えることにより、そのときどきの典礼的場面に音楽的特性を与える傾向をもっている。

 『5つの賛歌』作品140は1885年にライプツィヒで出版された作品でもともと無伴奏で書かれていたが、どの作品も後年オルガン伴奏付きに改作されている。

 「わが心の悩みを」は1878年の作品である。作品のテキストは旧約聖書詩編からとられ、四旬節第2週水曜日のミサの昇階唱で歌われるものである。